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自分の頭を賭けたロキ。負けたら、本当に差し出したの?
『若いエッダ』の公開英訳では、ロキは頭を切られません。「頭は賭けたが首は別だ」と言い出し、そのあと、口を縫い合わされる結末へ進みます。
うまい言い分を思い付いた、で終わる話でもないんだね。ここでは英訳の「ロキとドワーフの賭け」の章を、結末まで追います。ドワーフは神話に登場する、宝を作る者たちです。
シヴの髪を切った後始末から、自分の頭を賭ける話へ
発端は、ロキがシヴの髪を切ったこと。怒ったトールに対し、ロキは本物の髪のように伸びる黄金の髪を作ってもらうと約束します。
最初に頼んだ職人たちが作ったのは、髪だけではありません。槍と船もそろいます。ところがロキは、別の作り手の兄弟が、これらに匹敵する三つの宝を作れるかと、自分の頭を賭けてしまいます。
賭けの相手ブロク、英訳でBrokと書かれる人物が、兄弟と用意するのは、猪、指輪、ハンマー。神々が宝を比べ、トールに渡るハンマーが最も優れていると判断します。
最初は、切ってしまった髪の代わりを作る話。それを片付けるための宝が、今度は新しい賭けの材料になる。この広がり方も、ロキの場面を追うところです。
お金でも、逃げ足でも解決しない。そこで「首は別」
負けたあと、ロキは頭の代わりに身代金を出そうとしますが、ブロクは認めません。さらに逃げようとしても、頼まれたトールに捕まえられます。
そこでロキが区別するのが、頭と首。賭けたのは頭であり、首までは相手のものではないと言うんです。
ただ、そのまま無事に別れる場面へは進みません。ブロクはロキの唇へ穴を開け、口を縫い合わせます。英訳では、使われたひもの名前まで最後に書かれています。
言葉を使って頭を守ろうとした人物が、最後には口をふさがれる。 この順番を読むと、頭を切られなかったという一つの結果だけでは、結末を言い尽くせないね。
本文出典:Project Gutenberg・『The Younger Edda』。章名は「LOKE’S WAGER WITH THE DWARFS」です。
日本語で前後の物語もたどりたいなら
新潮社の『【完全版】エッダ─古代北欧歌謡集─』は、谷口幸男訳、伊藤尽・小澤実監修の本。公開目次には、詩の『エッダ』に加え、『スノッリのエッダ』の「詩語法」まで収録されています。
詩語法は、詩に使う言葉や言い換えを扱う部分。今回の英訳でも、黄金をシヴの髪と呼ぶ理由から賭けの話が始まっています。宝の誕生と、言葉の由来を行き来して読みたい人の候補です。
書誌・収録範囲:新潮社の紹介と目次。今回の読み解きは公開英訳をもとにしています。日本語で前後も読みたい人は、収録範囲を目安に選んでね。
もう一度読むなら、黄金の髪を手に入れたところから。後始末ができたはずなのに、どうしてそこで新しい賭けを始めるのか。最後の口までつながる流れが気になってくるね。