北欧神話の詩の蜜酒は誰のもの?クヴァシルからオーディンへ移る順番と三つの器、鷲の追いかけっこから詩の別名まで一緒に読んでみよう!

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オーディンが、飲めば詩人になれる蜜酒を手に入れる。

その一行を読んだら、すごい宝物を取りに行く冒険かな、と先を知りたくなるよね。でもこの話、酒の持ち主をたどると、最初からオーディンの旅ではないんだよ。

和平から生まれた賢者。二人の小人。親を失った巨人。そして、酒を守る娘。オーディンが現れる前にも、もう何度も話が動いている。

名前を全部暗記するところから始めると、そこで立ち止まりそう。だから今日は、蜜酒が誰の手から誰の手へ移ったか、その一本を先に追ってみよう。最後に出てくる詩の別名も、その道筋とつながるよ!

この記事はスノリの『若いエッダ』をRasmus B. Andersonが英訳した、Project Gutenberg公開の「詩の起源」の節を読んだ案内です。英訳ではKvaserやGunladといった綴りが使われていますが、本文ではクヴァシル、グンロズと記します。別の訳の表記や別の物語まで、すべて同じと決める読み方にはしないね。

人が殺される場面を含むので、その点も知っておいてね。血と蜂蜜から生まれた酒の話ですが、現実の飲料の作り方や効能の説明ではありません。ここで楽しむのは、北欧神話が詩の言葉をどう説明しているか、です。

目次

蜜酒が生まれる前に、和平のしるしだったクヴァシルを見よう

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まず、語っている人と聞いている人がいるよ。この英訳ではエーギルが詩の技芸の起源を尋ね、ブラギが答える形で話が始まる。単独の冒険譚だけを読むのとは少し違うね。どこから詩が生まれたのか、その疑問への返事として神話を語っているんです。

ブラギが最初に話すのは、アース神族とヴァン神族の争いのあと。両者が和平を結ぶ場で、器へ唾を入れる。そして、そのしるしを消してしまいたくない神々が、人の姿にする。その人がクヴァシルだよ。

えっ、人になるの?

ここが、この話の最初の大きな曲がり角。神々の仲直りを示していた物が、質問に答えられる賢者になる。普通の人が修行して賢くなった、という始まりではありません。知恵の持ち主がどう生まれたかを、この神話は和平の場面から説明しているんだね。

クヴァシルは世界を旅し、人々へ知恵を教える。この英訳は、彼が答えられない質問はなかったというほどの賢者として描くよ。ただし、この紹介を読んで、何でも答える人は必ず幸福になるという話だと思うと、次の場面で驚くことになる。

二人の小人、フィヤラルとガラルがクヴァシルを呼び寄せ、殺してしまう。その血を二つの器と一つの釜へ集め、蜂蜜と混ぜる。すると、その酒を飲んだ者が詩人や賢者になれるという、特別な蜜酒が生まれるんです。

和平のしるしだった人が、殺され、その知恵につながる酒へ変わる。流れを続けて見ると、酒が珍しい宝物だから奪い合うだけの話ではないことが分かるね。物語の始まりにいるクヴァシルを消してしまうと、後で詩を彼の血にたとえる理由も見えなくなる。

小人たちは神々へ、クヴァシルが自分の知恵で窒息したという説明をする。十分に学問を問う人がいなかったからだ、という言い分です。ここは、その説明が事実だったと読み替えないでね。物語は殺害を先に語り、そのあとに小人たちが伝えた説明を置いている。

人物の発言として語られた内容と、語り手が示している出来事を分ける。そうすると、小人たちが何をしたのかと、何を隠そうとしたのかを混ぜずに追えるよ。神話だから細かく見なくてよい、ではなく、神話だからこそ、その順番を楽しみたいところ。

三つの器の名も出るけれど、最初の一回は全部覚えなくても大丈夫。オーズレリルという釜と、ボズン、ソーンという二つの器。英訳での綴りも訳によって変わるので、手元の本で名前が違って見えたら、まず数と役割を合わせよう。

今、酒を持っているのは二人の小人。この一点が分かれば、次へ進めるよ。賢者の知恵につながる酒が生まれた。けれど、その酒を作った二人は、クヴァシルを殺した人たちでもある。その両方を残して読むと、この先の受け渡しも単純なお祝いにはならないんだね。

小人からスットゥングへ、酒が移ったのは命を助けてもらうため

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次に小人たちが招くのは、巨人ギリングとその妻。ギリングを舟へ誘い、海へ出たところで舟を転覆させる。泳げないギリングは亡くなり、小人たちは岸へ戻るよ。

妻が夫の死を悲しむと、今度は彼女も殺されてしまう。細かな残酷さを楽しむために読み進める必要はないけれど、夫婦の死が次の人物の行動につながることは残しておこう。ここで登場するスットゥングは、ギリングの息子です。

小人たちが酒を持っていた。そこへ巨人が来て、酒をもらった。

この二行だけだと、何が交換されたか分からないよね。スットゥングは親に起きたことを知り、小人たちを捕らえて海の岩場へ置く。満潮で水をかぶる場所なので、小人たちは自分たちの命を助けてほしいと頼む。そして、その代償として蜜酒を差し出すんです。

ここで酒の持ち主が変わる。

小人からスットゥングへ。

プレゼントでも、ごちそうへの招待でもなく、命を救ってもらうための差し出しだよ。この受け渡しの理由が分かると、あとで詩を小人たちの船と呼ぶ説明もつながってくる。酒が、海の岩場から命を救う役割を果たしたから、という筋道です。

そのまま船の形の酒が登場すると受け取ると、読みづらくなるかもしれない。物の姿を説明しているのか、出来事を踏まえた言い換えなのか。この話では、その言い換えを理解するために、先に出来事を聞かせているんだね。

スットゥングは酒を持ち帰り、フニットビョルグという場所へ隠す。そして、娘のグンロズに守らせる。この時点で、酒の所有者と、酒を守っている人が分かれるよ。ここも後で混ざりやすいので、メモするなら二つの役割を分けたい。

所有しているのは父のスットゥング。守っているのは娘のグンロズ。オーディンが酒へ近づくとき、この二人の判断が同じではないことが話を動かしていく。

なお、別の再話で小人の心情が詳しく書かれていても、それをこの英訳の説明へ黙って足さないでおこう。嫉妬したから、宝を独り占めしたかったから、と動機を埋める前に、今読んでいる文章に何があるかを見る。行動がひどいという読み手の感想と、書かれた動機の確認は分けられるよ。

ここまでを一息で戻すなら、クヴァシルの血から生まれた酒を小人が持ち、命の代償としてスットゥングへ渡した。そして岩の中で娘が守っている。この順番です。

長い名前が続いても、酒の居場所は追えている。いいね、その一本があれば大丈夫! 次にやって来るオーディンは、ただ扉を開けて一杯もらえる状況ではないんだよ。

オーディンは仕事の約束から入り、穴を通って三口で飲む

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オーディンの最初の行動から、穏やかな交渉だけを想像すると驚くかもしれない。九人の働き手の鎌を研ぎ、その砥石をほしがる人々の前で空中へ投げる。取り合った人々は、互いの鎌によって命を落としてしまうよ。

この場面を飛ばして、働き手が足りなくて困っている人をオーディンが助けた、とだけまとめると、順番が変わって見える。困る状況の前に何が起きたかも読んでおこう。オーディンが善い行いだけをする主人公として紹介されているわけではないんです。

彼が訪ねるのは、スットゥングの兄弟バウギ。ボルヴェルクという名を使い、九人分の仕事をする代わりに、スットゥングの酒を飲みたいと申し出る。そこでバウギは、自分には酒を自由に渡す権限がないと答えるよ。

それでも、一緒に頼んでみることは約束する。

この違い、見ておきたいね。バウギが仕事の対価として必ず酒を渡せる、と決まった場面ではありません。酒の持ち主は別にいる。夏の間の仕事を終えて、冬に二人でスットゥングのところへ行くけれど、酒は一滴も渡さないと拒まれてしまう。

そこでオーディンは別の手を考える。ラティという道具で岩へ穴を開けるようバウギに求め、開いたという穴へ息を吹き込む。最初は削りくずが顔のほうへ戻って来る。穴は向こうまで通っていなかったんだね。

もう一度開けさせ、再び吹くと、今度はくずが内側へ飛ぶ。確かめてから、蛇の姿になって中へ入る。バウギは道具を突き出して追うけれど、オーディンには当たらない。この英訳では、穴を通る前の二度の確認まで語られています。

ただ蛇へ変身できるから入れた、という一行にはしないで、入れる道をどう確かめたかも見る。ここまで酒の移動を追っていた読み方へ、通り道の動きが加わるんです。岩の外と中を分けて想像すると、行動を追いやすくなるよ。

オーディンはグンロズのもとへ行き、三夜をともにする。彼女は酒を三口飲むことを許す。ところが一口目で釜、二口目で一つの器、三口目でもう一つの器を空にして、酒をすべて飲んでしまう。

三口。三つの器。ここでつながった!

最初に出た容器の数が、ここで働くんだね。人の名前を全部覚えなくても、三つに分かれていた酒が三口で全部移る、という動きを見れば、場面の勢いを追えるよ。小さな一口を三回試飲したのだと決めて読む話ではありません。

ただし、グンロズが許したことを、スットゥングが納得したことへ広げないでね。守る人が酒を飲むことを許し、その後オーディンが酒を持って去る。父が最初から渡したかった、という物語にはならないよ。

二人の関係を理想の恋愛として説明するのも、この記事ではしない。この節の語りから分かる行動と、読み手が考える気持ちは分けておきたい。グンロズがその後どう感じたかまで、この一節にない台詞を作って補わなくても、酒が誰の判断で移ったかは追えるから。

鷲になった追跡の先で、蜜酒の物語が詩の別名へ戻る

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すべて飲んだオーディンは、鷲になって飛び去る。それを見たスットゥングも鷲になり、追いかけるよ。蛇で岩へ入り、鷲で空へ出る。場所が変わると、姿も変わって、今度は一気に追跡の話になる。

ここでアースの神々がオーディンの帰還に気づき、庭へ器を並べる。オーディンは戻ってきた酒をそこへ吐き出す。つまり、彼だけが飲んで才能を得て終わり、ではありません。酒を外へ出し、神々や詩を作れる人々へ渡すところまで語られるんです。

追手に捕まりそうになる場面で、後方へ出した酒も説明される。こちらは管理されず、ほしい者が取れるものとして語られ、未熟な詩人の取り分につながる。この古い英訳の表現を、現代の誰かの作品を評価する基準として使う必要はないよ。物語の結末に、取り分を区別する説明がある、と読もう。

最後まで来ると、詩をオーディンの獲物や贈り物と呼ぶ理由が見えてくる。酒を奪って運び、与えたのがオーディンだから。その前には、クヴァシルの血、小人たちの飲み物、スットゥングの蜜酒などの呼び方があったね。

これらは別々の飲料をカタログのように並べているのではなく、詩につながる一つの物の来歴を使った言い換えです。固有名詞だけを引くより、その人物が酒とどう関わったかを読むと、詩を指す言葉のつながりが分かりやすい。

読み直すときは、登場人物の名前の横へ役割を書いてみよう。クヴァシルは酒の起源につながる賢者。小人は酒を作り、持った二人。スットゥングは代償として受け取った所有者。グンロズは守る人。バウギは仕事の交渉と岩の穴に関わる人。オーディンは飲んで運び、神々へ持ち帰る人。

このメモは、神話の人物をいつでも一つの役割へ固定するためではないよ。今読んだ一節を追うための印です。別の話で同じ人物が現れたら、その話で何をしているかをまた読めばいい。最初から神々全員の関係図を完成させるより、一話の動きをつかむほうが始めやすいね。

日本語で読み広げる候補として紹介したのは、谷口幸男の『エッダとサガ―北欧古典への案内―』。新潮社の公開目次に、この蜜酒の話を扱う項目があります。2017年の復刊で、ISBNは9784106038136。物語を収めた原典の全訳そのものと同じ商品だと紹介する本ではなく、北欧古典への案内書だよ。

この記事のあらすじは、その日本語本の本文を読んで要約したものではありません。公開された古い英訳の該当節を使っています。紹介本を選ぶときも、同じ題材があることと、訳語や細部がすべて一致することは分けて考えてね。目次を確かめて、関心のある一話から読む入口にするなら候補になります。

手元の日本語訳で表記が違ったら、読み間違いだと急いで決めず、誰が守り、誰が仕事を引き受け、誰が酒を持ち去ったかを比べてみよう。異なる本を読むときは本の名前と章もメモへ添えると、どの説明で知った内容か戻って確かめられるよ。

最初の「飲めば詩人になれる酒」という一行へ戻ってみると、もう、その酒の後ろに何人もの人物と出来事が見える。そこが、この話を一つずつ追う楽しさだね。今日はクヴァシルからオーディンまで、酒の道筋だけをもう一度たどってみよう。詩の別名を見つけたら、あ、あの場面につながるんだ、と物語へ戻れるよ!

あらすじの出典はProject Gutenbergの『The Younger Edda』の「THE ORIGIN OF POETRY」の3〜5節。紹介本の書誌と目次は新潮社の『エッダとサガ』紹介で確認しました。

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この記事を書いた人

森の語り部のアバター 森の語り部 編集担当

北欧神話の神々、物語、世界観をたどりながら、気になったことを書き留めています。

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